気がついたら、病院の手術台に、横たわってた。
がっしりした躰つきのいかつい顔の白衣の男と
若い看護婦のねえちゃんが二人、おいらを押さえつけていた。

「た、助かるでしょうか」
オヤジがオロオロと言うと、
「今、助けようとしているところですよ」、白衣の男。

この家に来て、2週間目ぐらいのことだった。
一人で散歩中、取って食おうとしたやつがいたのだ。
チビすけの、愛らしいおいらは、襲われたのだ。

次の日の朝、オヤジは、行方不明になっていたおいらを、あちこち探して
家の隣の墓場で見つけてくれた。
血だらけで、ボロボロの赤い雑巾のようになってたそうだ。
両方の肩も腕も噛み切られ、肉が見え、
せなかの皮は破け、首のうしろやお腹にもいくつか穴が開いてたそうだ。

「死ぬなよー、死ぬなよー」
ボロボロ雑巾を助手席に、運転しながらオヤジは呟いていた。

「もう少し遅ければ、飛び出た肉が腐ってたところですよ」
夏のお陽さんがかんかん照りの頃だった。
「た、助かるでしょうか」
「今、助けようとしているところですよ、心配しなくても」

「・・・それで、手術代はあのォ、いくらかかるでしょうか・・・」
うすれる意識の中で、オヤジの心配はそのことなんだと思ったことを、よーく覚えている。